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特別障害者扶養信託契約などの贈与は非課税
「贈与」とは、自己の財産を無償で相手に与えることをいいます。
少々専門的にいうと、贈与というのは無償で人に物をあげる契約であり、売買契約が売り主と買い主の意志が合致して初めて成立するように、贈与も物を贈る人(贈与者)と物をもらう人(受贈者)の意志が合致したときに初めて成立します。これを「贈与契約」といいます。
例えば、AさんがBさんに「お礼にこの宝石をあげる」というのは贈与契約の申込となり、BさんがAさんに「ありがとう。それではいただきます」というのは贈与契約の承諾となります。
このような口頭による贈与契約も、贈与は契約ということから贈与契約が締結されることになります。一般に、契約は契約書を作らなければ成立しない、口約束では駄目であると誤解されがちですが、実際は双方の意志が合致すれば贈与契約はそれで成立します。
次に、父親と子どもの間で「私が死んだら自宅はおまえにやる」といわれ、子どもが了解して話がまとまっていたとしましょう。
「自宅はおまえにやる」というのは普通の贈与契約となり、この契約の効力は贈与契約の締結と同時に発生しますが、「私が死んだら自宅はおまえにやる」というものは、父親が死亡することによって効力が生じるもので、これを「死亡贈与」といいます。ですから、父親の死亡と同時に死亡贈与契約が効力を生じ、自宅は子どものものとなります。
しかし、父親が「遺言書」で「自宅は子どもにやる」と書いていたとします。これは「遺贈」となってしまいます。
遺贈は無償でもらえる訳ですから、贈与に似ています。しかし、贈与や死亡贈与が契約であり双方の意志の合致が必要であるのに対して、遺贈は贈る人(遺贈者)の一方的な意志だけで成立してしまいます。つまり、遺贈は贈与契約ではなく、相続となってしまうのです。
遺贈は遺贈者が一方的に遺言を行えば効力を生じます。それでは、もらう人(受遺者)の意志は全く無視されるのかというと、そうではありません。遺言者の死亡後、受遺者はいつでも遺贈を放棄することが認められています。
このように、贈与とは金銭や財産を譲られたことに対して、なんの見返りもともなわないものですが、金銭や財産を贈与された人には贈与税がかかることになります。贈与税は個人から個人への贈与だけが対象となります。(図34)
税法上では、贈与税は相続税を補完する税金といわれており、生前に自己の財産を贈与することで相続税を減少させることができますので、税負担の公平を保つために設けられている税金ともいえます。つまり、贈与税は財産をもらったときにかかる税金というだけではなく、贈与によって相続税を補う役目ももった税金なのです。

 

 

 

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